-免責事項-
ここには非常にシビアな法律での対応方法を記載しています。法律は読み取り方や受け取り方で意味が180度異なるように判断することが出来てしまいます。
そのため実際に法律により争うこととなった場合は個人で判断せず必ず司法書士または弁護士に相談してください。
私は弟がいましたが、彼は残念ながら鬱病により自らの命を都内賃貸アパートで絶ちました。
残された家族にとってそれはとても大きな事件であり、その時から毎日のように「助けられなかったのか」「普段の接し方に問題は無かったか」「悩みを克服させられなかったのか」と自分を責めるようになってしまいました。
このブログを書くにあたり当時の事を事細かく思い出したり調べたりする必要があり非常に辛い作業でしたが、私と同じ境遇に置かれたため故人の賃貸物件解約の際に不必要な多額の金銭を要求され、泣き寝入りをしている方々がいることを考えると、少しでも力になりたいと考え私の対応方法を記載することとしました。
事故後の不動産管理会社と大家の対応
弟の遺体を発見したのは私でした。弟のアパートへ行くと中で亡くなっていました。そのときは非常に錯乱したのですが、弟の隣人の助けもあり警察を呼ぶことが出来ました。
弟の遺体を引き取るため警察の担当者から指定のあった時間に警察署赴くと不動産屋が既に待っていました。
最初私は彼を警察担当者だと思い話を伺うと、自分は不動産管理会社のものである事を告げ
「借主の自殺の場合は大家へ保障をしなければいけないので後ほど大家を含めて話をしたい」
と話し、告別式の日取りも未確定の状態で賃貸物件解約と物件保障の話を不動産管理会社事務所ですることとなりました。
指定された日時に両親と共に不動産管理会社事務所で不動産屋担当者と大家から話を聞くと、
「契約書と東京都賃貸住宅紛争防止条例に従い、想定外の利用による損害と次の借主に対しての説明責任による賃貸物件価値の下落に対しての保障をすべき」
と一方的に言われ、金額としてはその当時の家賃1年分と賃貸物件リフォーム代金(未確定)を請求されました。
どの様な保障なら合意できるのかなど意見交換や必要な補償範囲の説明もなく、金額と未確定なリフォーム代金が言い値で提示された状況です。
その時は直ぐに判断せず、一先ず家に帰って後ほど回答することとしました。
その賃貸アパートが丸ごとリフォームできるような金額でとても払うなど言えない金額で驚きましたが、払うとも払わないとも言わず帰ってきた、この判断が今から考えると良かったと思います。
うちに帰りショック状態の両親を見つつ弟の事を思い出し、「今ここで冷静に考えられるのは自分しかない」と思い冷静に状況を確認しました。
私は過去に一時法曹家を目指し法律を勉強していたこともあり法文を読むことが出来ます。
相手の挙げてきた条例に加え、賃貸物件の法律である宅建法と借地借家法と念のために民法も確認しましたが明確な賠償既定がありません。
もちろん該当賃貸物件の契約書にも自殺をした場合に関わる、または類似する賠償既定は一切かかれていません。
そして
判例も確認しましたが該当しそうな判例が2件存在し、その2件はそれぞれで背反する内容でした。
以上より不動産管理会社と大家は知っててやっているのか知らずにやっているのか判断できませんが、効果のない条例をあたかも効果のあるように示し保障金の名目でお金を請求しているように見えました。
私はこのとき、これら請求は全て拒否できると判断し決意をしました。拒否しないと両親が破産するのではないかと思われる程の金額のため本気で戦う決心をしました。
以降より具体的にどのように交渉して保障金を支払わず物件を解約したのか書きます。
まずは落ち着くよう努力しました
家族を亡くして直ぐの遺族は自分が思っている以上に正常ではありません。なので先ずは落ち着いて対応する努力をしました。
自殺=悪と考えてしまい、不動産管理会社や大家の言い値で保障金やリフォーム代を支払ってしまいそうになりますが、早く終わりにしたいという気持ちも強く出ますが、ここは冷静になるよう努力しました。
不動産管理会社と大家は彼らの業務について話してきていて、大切な家族をなくしどうすればいいのか分からない状況に金銭を支払うように請求しています。故人は命を失い、遺族はお金を支払うというのでは悲惨です。
先ずは落ち着く事が大切で、決してその場の感情でお金を払う契約をしないように努めました。
両親の代理人になりました
両親だと言われたまま支払い契約を行う可能性があるので私が代理人になり両親と不動産会社/大家が直接連絡を取らないようにしました。
不動産会社の提示した東京都賃貸住宅紛争防止条例を確認しました
大家・不動産管理会社から保障金の支払い根拠として提示された条例ですが、この条例は東京都の説明によると
「この条例は、住宅の賃貸借に係る紛争を防止するため、原状回復等に関する民法などの法律上の原則や判例により定着した考え方を宅地建物取引業者が説明することを義務付けたものです。 」
とあります。
もっと簡単に言うと
契約前の説明既定で、保障や損害賠償のための条例ではありません。
この条例を不動産管理会社や大家が提示して「このように定められているので保障しろ」と言って来ていました。
しかし上記の通りこの条例は保証金を行うための条例ではないので、支払いのための根拠になりませんし強制力もありません。この条文を盾に相手が賠償を求めてくるので、悪質な業者なのかもしれない、と考えました。
そのためこちらも法律で武装し戦う必要があるかもと考え、幾つか関係する法律を確認しました。
宅建業法 第47条第1項を確認しました
これは大家・不動産管理会社から資産価値の低下の根拠とされる可能性のある法律です。法文は次です。
(業務に関する禁止事項)
第47条 宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
1.宅地若しくは建物の売買、交換若しくは賃借の契約の締結について勧誘をするに際し、又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
イ 第35条第1項各号又は第2項各号に掲げる事項
ロ 第35条の2各号に掲げる事項
ハ 第37条第1項各号又は第2項各号(第1号を除く。)に掲げる事項
ニ イからハまでに掲げるもののほか、宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であつて、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの
2.不当に高額の報酬を要求する行為
3.手付けについて貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為
文章は分かりづらいですが、
簡単に書くとこれも契約前の説明既定で、保障や損害賠償のための法律ではありません。
しかしこの法律を不動産管理会社や大家が提示して「このように定められているので保障しろ」と言ってくる可能性もあります。
しかしこの法律も賠償を行うための法律ではないので何の根拠も強制力もありません。ただの契約前の説明範囲を示した法律です。
そしてこの法律に記載されている説明事項には自殺が明確に記載されていはいません。そのため該当の部屋以外の部屋、例えば隣室や階下の部屋を契約する方への説明義務は規定されていないと読む事が自然です。
以上より、
該当の部屋に関しては次の契約者に説明の義務があるが、それ以外の部屋に関しての説明義務はないと判断できます。
民法の規定に基づく債務不履行に対する損害賠償請求を見直しました
賃借契約者の場合、借主は貸主へ賃貸物件の返却時に経年劣化以外の損害を修繕して返却する義務があります。しかし自殺の場合を明確に規定していないという事と、損害賠償の範囲が明確ではありません。
損害賠償の範囲に関する法文です。
(損害賠償の範囲)
第416条
1 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
とあり
、「当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。」となっている範囲に果たして自殺が当てはまるかどうかが問題となります。
ここで言う当事者は本人が存在しないため保証人の遺族を指すと考えることが自然ですが、はたして予見できたのでしょうか?
予見なんて出来ないので大切な家族を亡くしています。
なのでこの場合は予見できない事情が発生していると考えることができ、自殺による賃貸物件への影響を明確な賠償対象としていないことが分かります。
しかし実害があった場合は別です。
実害の計算方法は不動産管理会社や大家の言い値ではなく、過去10年ほどの賃貸契約と空き室率を確認し事故後の影響により数年間で何パーセント空き室率が増加したのかを実害として計算する必要があります。
この過去の契約者を記載した帳簿は宅建法で定められているので大家から提示できます。そして実害の証明責任は大家にあります。
上記の条例と法律を再確認し大家との交渉に臨みました
大家と不動産会社は再度東京都賃貸住宅紛争防止条例を示し、借主はこれに従わなければ、、、と主張してきましたが、その条例の意味と賠償責任を記載していない旨を伝え、支払いを拒否しました。
しかし弟の部屋の経年劣化以外の部分、例えばキズや故障及び弟が張り替えたカーペットの回復など、部屋の原状回復と心ばかりのお詫びとしてひと月分の家賃の代金を提示し、弟の契約を解約しました。
当時は状況が状況のためなかなか人に相談する事も難しく、藁をもつかむようにWEBや本で情報を調べましたが、その時WEBで「あれ?何だか変だな???」と思う情報が目につきました。
最初は気が付きませんでしたが、よくよく読むとおかしな事を書いていました。
その時のWEB検索時に目についた不動産業界がまかり通している嘘ですが、
インターネットの検索サイトで「自殺 賃貸 損害賠償」と入力して検索を実行してください。
不動産業界関係者側から書かれた記事が一面に出てきます。
不動産業界関係のサイトであるにも関わらずあたかも中立のサイトのように書かれているサイトもあります。
「賃貸物件での自殺による保証人の責務があるので、賃料の○年程度の支払いが妥当です。」と一方的に提示され根拠が良く分からず有耶無耶にされています。
支払う必要があるとすれば、事故後次の契約者に対する心理的瑕疵による賃料低下の保障です。それも実害を計算する必要があるので○年とは決められません。
中には事故物件は安くなるという理由で好んで入居する方もいると聞きますし、社会的事情で不動産業界が下火となり事故物件と同等の物件と比べても目立った損害が事故物件に出ないかもしれません。
損害が出ていない場合は賠償も必要ありません。
保障を支払う必要の無い根拠をまとめると
1.法律・条令に既定されていない
上に書いた通りで規定はありません
2.判例で自殺を明確な損害理由としていない
判例はWEBで検索可能なのでもし興味あれば見てください。自殺が明確な損害理由とはなっていません。
3.不動産とは投資物件です
皆さんの生活になじんでいる不動産の賃貸物件ですが、これは完全な投資物件です。投資にはリスクがつき物であり、リターンを得るためにはリスクも許容しなければいけません。
保障を無条件に認めるということは、リターンは貸主が全て得てリスクは借主が全て背負うという事になります。そのような不公平が許されるはずはありません。
最後に
契約事項は最初は話し合いにより双方が条件を出し合う必要があります。自殺による契約解除も同様です。
それにしても、不動産会社と大家からは金銭を請求される前に一言ぐらい両親を労う言葉が欲しかったな、、、